アルツハイマー型認知症の新薬について

記事内に広告を含む場合があります

薬剤師

日本の製薬大手のエーザイがアルツハイマー型認知症の新しい作用機序の新薬がアメリカで承認されたと発表しました。近いうちにおそらく日本でも承認されることになるでしょう。これまでもドネペジル(商品名:アリセプト)というアルツハイマー型認知症の治療薬といわれるものはありましたが、認知症の進行を抑えるものであり、重症の認知症には単独では効果が出ないので、他の薬と併用することが多いようです。このドネペジルもエーザイが開発したものです。

ドネペジルではアルツハイマー型認知症は治らないのか?

ドネペジルが登場するまでは脳の血流をよくする薬が使われていましたが、認知症の進行を抑えるものではなく、他に選択肢がないため、やむを得使われていた側面があります。ドネペジルが登場して認知症の患者さんとその周りで介護する人たちの負担はかなり軽減されているようです。最近ではジェネリック医薬品も登場し、経済的負担も少なくなっています。大部分の方はその恩恵を受けていますが、一方でごく一部の方は吐き気、食欲不振などの消化器症状といわれる副作用、またひどい場合は手足が震えたり、体が無意識に動いたりする錐体外路障害といわれる副作用によりドネペジルを服用できない人もいます。ドネペジルが使えなくても同様の効果のある貼り薬などもあるので、方法はありますが、いずれにしても認知症を治療して認知機能を劇的に改善することは期待できないのが現状です。

新薬アデュカヌマブが根本治療といわれる理由

今回発表された薬は物質名をアデュカヌマブといい、アルツハイマー型認知症の原因となっているアミロイドベータというタンパク質を取り除くことにより認知症を治療できるといわれています。そのメカニズムはアミロイドベータに対する抗体となりタンパク質を取り除くことができるそうです。アデュカヌマブはモノクローナル抗体といわれるものの一種で、モノクローナル抗体はこれまでにもがん、リウマチの治療にも使われています。いずれも病気を起こしている部分に特異的に結合することによりがんであれば、免疫が攻撃するように、リウマチであれば、免疫が攻撃しないようにする役割があります。同じように新薬アデュカヌマブもアミロイドベータに結合して除去することができるというわけです。

アデュカヌマブの問題点

効果が確認されたのは軽症の患者さんにだけ

まず1つめはアメリカで承認をされる際に患者さんに対するデータが必要となりますが、症状が軽症の人やまだアルツハイマー型認知症とまでは言えない少し記憶力が悪くなってきているかなという状態の人に使って効果があったというデータだったのです。従来のドネペジルでは主にアルツハイマー型認知症初期から中等症の患者さんに使うことを考えるとドネペジルに比べて新薬アデュカヌマブは守備範囲が狭いことになります。

注射剤である

モノクローナル抗体はアミノ酸が結合してできているものであるので、のみ薬にはできません。ドネペジルはのみ薬ですが、この薬は注射剤であるため、主に病院で扱うことになると考えられます。治療のために病院に通うのは使い勝手が悪いと思います。

値段が高い

モノクローナル抗体は作製するのにとてもコストがかかるものであり、がんやリウマチの治療のために使われている薬も1本の注射で数十万円が当たり前になっています。日本の保険制度では高額療養費制度があるため、実際にそのまま負担するわけではありませんが、現在はジェネリック医薬品も存在するドネペジルと比較すると値段が高いことは確かです。

まとめ

新薬を作っている製薬業界は国のジェネリック医薬品推奨の政策と外国勢に押されて厳しい時代になっていますが、その中で、日本の企業であるエーザイが新薬を発売できる見込みになったのはとてもうれしいことですが、現在得られている情報ではしばらくは従来から使われている薬が主流になると私は考えています。

 

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました