抗菌薬が効かなくなるAMR(抗微生物薬耐性)について思うこと

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お薬

こんにちは。薬剤師のタコ🐙です。昨日の新聞紙上で「抗菌薬 正しく使って」というタイトル(2020.11.5 23P 毎日新聞)で抗菌薬の使い過ぎによる薬剤耐性菌の増加が懸念されるという内容のものが掲載されていました。20代、30代の女性に処方されることが多く、その理由としてこの世代は小さい子を抱えていて子供の受診のついでに処方してもらうことが多くなるのだろうという記事でした。男性と比べて処方量にして20代では5割増し、30代では4割増しだそうです。医療関係者の間ではAMR(抗微生物耐性)と言って、問題になっています。30年後には世界で1000万人もの人がAMRにより亡くなるという予測になっているようです。

風邪に抗菌薬は基本的に必要がない

いわゆる風邪はほとんどがウイルス感染が原因で、抗菌薬は効きません。しかし、長い間風邪=抗菌薬のイメージがあり、科学的根拠はなくても処方されることがことが多かったことは確かです。私もこの仕事に就くまでは風邪を引いたら抗菌薬をのむものと思っていました。

子供の場合はウイルス感染により風邪をひいたら体が弱って細菌感染も起こすと命にかかわることがあるので、抗菌薬が出した方がいいようですが、大人の場合は原則として使う必要はないということになっています。核家族が多い現代では、子育て世代のお母さんたちは体調が悪くなったら子供の面倒を見る人がいないので、ちょっとした風邪症状でも抗菌薬を処方してもらえるよう依頼してしまうということが考えられます。

細菌感染症が脅威になる時代に逆戻り?

今年に入ってから新型コロナウイルスが流行したときに治療法がないため、できるだけ外出しないようにして人との接触を避けるという方法を取らざるを得なくなりました。抗菌薬が効かない細菌が増えてくると、たとえば肺炎に効く抗菌薬がなくなった状況で肺炎が流行すると、子供や高齢者は外に出ないでください、ということがあり得る社会になるということです。今まで、気にもしなかった病気で亡くなる人が増えてくるということを意味しています。

元々は病原性(病気を引き起こす性質)が弱い細菌でも繰り返し抗菌薬にさらされていると病原性が強いものに変身して抗菌薬でも死なないものが発生し(=耐性がつく)、弱いものは抗菌薬でいなくなり、強いものだけが体の中で増殖し、体が弱ったときに病気を発症すると、耐性がついた抗菌薬では効果がないので、別の抗菌薬を使うことになります。以下にAMR啓発ポスターのリンクがあります。

http://amr.ncgm.go.jp/pdf/poster-p2.pdf

ここで、抗菌薬は何種類かあるのですが、使う病原菌によって効くものと効かないものがあるので、種類が限られる場合があります。一つの抗菌薬が耐性になってしまうと同じ種類のものは効かない可能性があります。そのため、選択肢がさらに限定されてしまうため、AMRの問題は深刻なものとして認識されています。

さらに、抗菌薬は新しい種類のものは20年くらい開発されていません。もしかしたらもう新しい種類の抗菌薬は開発されることはないのかもしれません。そうだとしたら、とても恐ろしいことです。第二次世界大戦後からいろいろな種類の抗菌薬が開発され、細菌の感染症を克服してきましたが、耐性菌がこれ以上蔓延すると感染症で亡くなる人が増えることになりそうです。

だから、この記事を読んでくださった皆さん、これからは特に手洗いを励行し、病院にかかったときは、抗菌薬をくださいと頼むのをやめてください。もちろん、必要な時はあります。その時は処方された日数をきっちりのんでください。そして症状が治まったからとからといって途中でのむのをやめないでください。他の人に残ったものをあげたりしないでください。それが耐性菌を出現させない対策です。よろしくお願いいたします。

このブログを読まれた皆さんの意見をお問い合わせフォームからいただければ幸いです。

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