抗菌薬が効かなくなるAMR(抗微生物薬耐性)について思うこと

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「風邪をひいたので、念のため抗生物質を出してもらおう」——そう考えたことがある方は多いのではないでしょうか。実は、風邪の多くにはウイルスが原因で、抗生物質(抗菌薬)は効きません。それどころか、必要のない場面で使い続けることが、世界的に深刻化している「薬剤耐性(AMR)」という問題につながっています。今回は、薬剤師の視点から、AMRとは何か、なぜ風邪に抗菌薬が効かないのか、処方された薬の正しい飲み方や家庭でできる対策について解説します。

なぜ風邪に抗生物質(抗菌薬)は効かないのか

風邪(急性上気道炎)の原因の多くはウイルスです。抗生物質(抗菌薬)は細菌の増殖を抑えたり殺したりする薬であり、ウイルスには作用しません。そのため、多くの風邪症状に対して抗菌薬を服用しても、症状の改善は期待できないとされています。

大人と子どもで対応が異なる場合も

ただし、中耳炎や肺炎など、細菌感染が疑われる・確認された場合には抗菌薬が必要になることがあります。特に小さなお子さんは症状の判断が難しいこともあるため、自己判断せず医師の診察を受けることが大切です。市販薬での対応については、以下の記事もあわせてご覧ください。

子どもの発熱で使える市販薬は?自宅療養の備えを薬剤師が解説

薬剤耐性(AMR)とは何か

薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)とは、細菌などの微生物が、抗菌薬(抗生物質)に対して効きにくくなったり、まったく効かなくなったりする現象のことです。抗菌薬が使われるたびに、その薬に耐性を持つ細菌が生き残りやすくなり、世代を重ねるごとに耐性菌が増えていきます。

医学雑誌Lancetに掲載された2022年の研究では、2019年時点で世界の年間死亡者数のうち、薬剤耐性菌が関連する死亡が約495万人、薬剤耐性菌が直接の原因と推定される死亡が約127万人にのぼると報告されています。厚生労働省も「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を策定し、抗菌薬の適正使用や耐性菌に関する情報発信、医療現場での対策強化などに国を挙げて取り組んでいます。

耐性菌が増えると、これまで治療できていた感染症に有効な薬がなくなり、治療の選択肢が狭まってしまう可能性があります。手術後の感染予防やがん治療中の免疫力低下時など、抗菌薬が「効くこと」を前提に成り立っている医療は少なくありません。AMRは特定の誰かだけの問題ではなく、将来自分や家族が治療を受ける場面にも関わってくる、身近な問題だといえます。

処方された抗菌薬の正しいのみ方

抗菌薬による治療でAMRを防ぐために、患者さん側でも意識できることがあります。

医師の指示された期間・回数を守り、自己判断で早めにやめない

症状が良くなったように感じても、体内に細菌が残っている場合があります。中途半端な服用は、耐性菌が生き残る一因になるとされています。

飲み忘れた分をまとめて2回分飲むなど、指示と異なる飲み方をしない

抗菌薬が余っても、次に体調を崩したときに自己判断で服用しない(症状が違えば効果が期待できないばかりか、耐性菌を増やす一因にもなりえます)

他人からもらった抗菌薬を服用しない、自分の分を人にあげない

薬の飲み方全般について不安がある場合は、以下の記事も参考にしてください。

飲み薬の正しいのみ方|薬剤師が教える基本と注意点まとめ

【広告】抗菌薬が苦くて飲みにくいときに

処方された抗菌薬は、自己判断で中止したり、錠剤を砕いたりせず、医師・薬剤師の指示どおりに服用することが大切です。

苦味や飲み込みにくさが気になる場合は、服薬補助ゼリーを利用できることがあります。お子さんには抗生物質や苦い薬向けの「おくすり飲めたね チョコ風味」、成人の方には「らくらく服薬ゼリー」が選択肢になります。

※薬によって適切な使用方法が異なるため、心配な場合は薬剤師にご確認ください。

家庭でできるAMR対策

抗菌薬を処方される場面そのものを減らすことも、AMR対策として大切です。

手洗い・うがいなど、日頃からの感染予防を心がける

インフルエンザなど、対象となるワクチンの接種を検討する

風邪のような症状で受診した際、「抗生物質を出してほしい」と自分から求めない。

ウイルス性が疑われる場合、医師は抗菌薬を処方しないという判断をすることがあります

処方された薬について疑問があれば、自己判断せず薬剤師や医師に相談する

AMRは、一人ひとりの日々の小さな行動の積み重ねで進行を抑えられる可能性がある問題です。「なんとなく不安だから念のため」ではなく、必要なときに必要な薬を正しく使うことを意識してみてください。薬の飲み方や体調について気になることがあれば、かかりつけの薬剤師にお気軽にご相談ください。

このブログを読まれた皆さんの意見をお問い合わせフォームからいただければ幸いです。

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