ジェネリック医薬品普及にあたっての医療機関と製薬企業のそれぞれの立場

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医療制度

こんにちは。薬剤師のタコP🐙です。医薬品は製造方法を届け出た方法で製造しなければなりませんが、最近ある医薬品メーカーがその方法を守らずに製造した結果、その薬を服用した方が死亡するという事件があり、別のメーカーも決められた製造工程に反して製造し、出荷していたということで、それぞれ業務停止の処分を受けたということがありました。皆さんはけしからん、そのようなメーカーは廃業させればよいではないか、という方もいらっしゃると思いますが、

医療機関(薬局)の立場から

かつてはジェネリック医薬品はゾロ品と呼ばれ、安かろう悪かろうというイメージがあり、印象が悪いものでしたが、生物学的同等性試験と呼ばれる先発品(新薬)と同等の効果があるかどうかを比較する試験があり、販売承認時に品質が担保されるようになりました。ひとたび製品の出荷が止まるようなことが起こるとそのメーカーの商品が回収になり、薬局では回収となったジェネリック医薬品の代わりになる同一成分のジェネリック医薬品を探すことになります。しかし、すぐには他のメーカーの急な需要の増加には対応することができないため、代替品がなかなか見つかりません。医薬品卸が従来から納品している医療機関を優先に納品するため、他のメーカーのジェネリック医薬品に変更できなくなります。その結果、その製品に関してはジェネリック取り扱い自体を一時的に断念することになります。これはどうして問題になるかということですが、医療機関の経営上の問題があります。

厚生労働省はジェネリック医薬品使用率の目標を80%に設定し、それに従って目標を達成するために医療機関に支払う診療報酬や調剤報酬を決めています。そのため、われわれ薬局や医療機関はジェネリック医薬品を扱う割合が低いままだと、経営ができなくなるようになっています。健康保険料と社会保障の予算(税金)は有限であるという理由のため、政策として進められてきた結果、最近10年くらいで急にジェネリック医薬品に置き換わってきました。以下のリンクが厚生労働省のHPからの出典であり、厚生労働省がどれだけこの事業に力を入れていたかがわかるものになっています。

後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進について |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

この記事の抜粋したものが以下の表になります。

  • 後発医薬品調剤体制加算1(15点):後発医薬品の調剤数量が75%以上
  • 後発医薬品調剤体制加算2(22点):後発医薬品の調剤数量が80%以上
  • 後発医薬品調剤体制加算3(28点):後発医薬品の調剤数量が85%以上
  • 後発医薬品減算(-2点):後発医薬品の調剤数量が40%以下

後発医薬品調剤体制加算というのが後発医薬品(ジェネリック医薬品)を扱っている割合が高くなるともらえる報酬が多くなるということになっています。

種類1

製薬企業(主にジェネリック医薬品を製造するメーカー)の立場から

製薬企業には主に先発医薬品(新薬)を作る企業と主にジェネリック医薬品を作る企業(ジェネリック医薬品メーカー)があります。主に新薬を作る企業はだれもが企業名を知っている会社が多く、10年あまりの期間と数百億円もの資金をかけて新薬を開発しているところがほとんどです。そして大規模な工場を持ち、欠品させないシステムになっています。それに対してジェネリック医薬品メーカーは小規模の企業も多く、大企業と同じように仕事を進めるのが難しい場合もあります。ジェネリック医薬品は新薬よりも公定価格である薬価が半額以下であることがほとんどであり、その値段は1錠が10円以下の場合もあります。そのため、できるだけシェアを確保し、大規模に販売できるかどうかが重要になってきます。そして製造現場に無理を強いることになり、冒頭のような事件が起こることになるのです。ジェネリック医薬品は値段が安くて採算が合わなくなって発売されなかったり、発売されてもすぐ中止になってしまうこともありました。

日本ジェネリック製薬協会
日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)は、ジェネリック医薬品メーカーを会員とする団体です。1965年の設立以来、高品質で低価格のジェネリック医薬品の一層の普及と、ジェネリック医薬品産業の健全な発展を通じ、国民の健康と福祉の向上に貢献することを目的として様々な活動を行っています。

私の意見

ジェネリック医薬品は国の政策により推進してきた要因は大きいですが、ややもすると現場では経済的な側面、自己負担額ばかりが強調されています。このままでは他のメーカーも同じようなことをしているのではないかという不信感が薬剤師の間に広がってきて、最もジェネリック医薬品の普及に必要な薬剤師の協力が得られない状況になるのではないかと危惧しています。製薬業界全体が健全に発展し、結果的に医療機関に迷惑がかかるようにならないようなシステムを構築してほしいと考えています。

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