「ドラッグストアで買った薬の代金で、税金が戻ってくるかもしれない」——そう聞いたら驚きますか?それを実現するのが「セルフメディケーション税制」です。薬局で働いていると、この制度を知らずにレシートを捨ててしまっている方が本当に多いと感じます。しかもこの制度、期限付きの時限措置とされてきましたが、2025年末の税制改正で主要部分の恒久化が決まり、2027年からは対象品目も大きく広がることになりました。この記事では、現役薬剤師の私が、制度のしくみ・いくら戻るのか・申請のやり方を、最新情報とあわせてわかりやすく解説します。
セルフメディケーション税制とは?
対象の市販薬を年間12,000円超買うと所得控除が受けられる制度
セルフメディケーション税制は、対象となる市販薬(OTC医薬品)を1年間に世帯合計で12,000円を超えて購入した場合、超えた分の金額(上限88,000円)を所得から差し引ける制度です。軽い不調は市販薬でセルフケアしてもらうことで、病院にかかる医療費を抑えることを目的に2017年に始まりました。
対象の中心は「スイッチOTC医薬品」——もともと病院で処方されていた医療用の成分を、市販薬として買えるようにしたものです。ロキソプロフェン(ロキソニンS)やフェキソフェナジン(アレグラFX)などが代表例で、「市販薬は効かない」というイメージを覆す、処方薬と同じ成分の薬が数多く含まれています。さらに2022年の改正で、かぜ薬・解熱鎮痛薬・咳止め・鼻炎薬などの一部の非スイッチ成分の製品にも対象が広がり、対象品目は約3,200品目まで増えています。
対象かどうかは「マーク」と「レシート」でわかる
対象商品のパッケージには「セルフメディケーション税・控除対象」という共通識別マークがついています。さらに、ドラッグストアのレシートでは対象商品に「★」などの印がつくのが一般的です。つまり、難しいことを覚えなくても、レシートを見れば対象かどうか判断できるのです。まずは今日から、薬を買ったレシートを捨てずに取っておくことから始めましょう。
いくら戻る?条件と計算例
条件は「12,000円超の購入」と「健康診断などの取組」
この控除を受けるには、購入額のほかにもう1つ条件があります。その年に、健康診断・勤務先の定期健診・予防接種(インフルエンザワクチンなど)・がん検診といった「健康のための一定の取組」を行っていることです。会社の健康診断を受けている方なら、それだけで条件クリアです。結果の提出は不要で、領収書や結果通知を手元に保管しておけば大丈夫です。
計算例:年間5万円購入なら1万円前後の減税に
たとえば家族全員分の対象医薬品を年間50,000円分購入した場合、50,000円−12,000円=38,000円が所得控除の対象になります。所得税率20%の方なら所得税が7,600円戻り、住民税も約3,800円安くなるので、合計で1万円強の減税です。花粉症の薬や解熱鎮痛剤、咳止め、湿布などを家族分買っているご家庭なら、意外と届いてしまう金額ではないでしょうか。
医療費控除とはどちらか一方だけ
注意点として、この制度は従来の医療費控除との選択制で、併用はできません。目安として、病院代や処方薬代を含む医療費が年間10万円を超える年は医療費控除、超えない年で市販薬の購入が多ければセルフメディケーション税制、と使い分けるのがおすすめです。どちらが有利かは両方計算して比べてみてください。
申請のやり方は?レシート提出は不要になりました
申請は確定申告で行います。会社員の方も年末調整ではできないので、この控除を受けたい年は確定申告が必要です。といっても手続きは年々簡単になっていて、2022年からはレシートや健診の証明書類の提出が不要になりました(自宅で5年間保管しておくだけでOK)。スマホのe-Taxなら、明細を入力するだけで完結します。国税庁の確定申告書等作成コーナーに専用の入力欄があるので、対象額を集計して入力しましょう。
2027年からさらに使いやすくなります
冒頭でも触れたとおり、この制度は2026年12月31日までの時限措置とされてきましたが、2025年12月に決定した税制改正大綱で、スイッチOTC医薬品を対象とする部分の恒久化と、非スイッチOTC分の2031年末までの延長が盛り込まれました。さらに2027年からは、便秘薬や下痢止めなどの消化器官用薬、市販の検査キット(体外診断用医薬品)などにも対象が広がる予定です。「いつ終わるかわからない制度」から「これからずっと使える制度」に変わったわけで、覚えておく価値は一段と高まりました。
薬剤師として最後にひとつだけ。この制度はお得ですが、控除のために薬を余分に買う必要はまったくありません。必要な薬を必要なだけ買い、そのレシートをきちんと取っておく——それだけで受けられる権利です。「この薬は対象かな?」と迷ったら、お会計の前にお気軽に薬剤師や登録販売者に聞いてください。レジ前の30秒の質問が、年末に1万円の差になるかもしれません。


コメント