電子処方箋とは?患者がやることと使えないときの備えを薬剤師が解説

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病院で「電子処方箋にしますか」と聞かれて、よく分からないまま紙を選んだ——そんな経験はありませんか。名前だけはニュースで見たけれど、自分に何が関係するのかは分からない、という方が多いと思います。実は薬局の窓口でも、患者さんから電子処方箋について質問されたことは一度もありません。それくらい、まだ話題に上がらない仕組みです。この記事では、電子処方箋を選んだときに患者さん側は何をすればいいのかを整理しました。あわせて、マイナ保険証がないと使えないのか、何が得なのかも、薬剤師の視点から解説します。

電子処方箋とは何か、いま患者にどれくらい関係があるのか

電子処方箋は、これまで紙でやり取りしていた処方の情報を、電子データで医療機関から薬局へ渡す仕組みです。2023年から運用が始まりました。紙の処方箋が即座になくなるわけではなく、電子と紙のどちらにするかを選べる仕組みだと考えていただければ大きく外れません。

受け入れ側である薬局の対応は進んでいて、厚生労働省によると2026年5月時点で9割以上の薬局に導入されています。一方で、処方する側の医療機関、とくに診療所での導入は薬局より遅れているとされています。薬局は準備ができていても、処方箋を出す側がまだ対応していない。そんな状態が各地で起きているようです。

実際、筆者の薬局でも電子処方箋を応需する機会はまだ多くありません。導入率の数字と、窓口での実感にはかなり開きがあるというのが正直なところです。冒頭でも触れたとおり、患者さんから聞かれたこともありません。いま慌てて何かを準備する必要はない、というのが現時点の答えです。ただ、仕組みだけ知っておくと、いざ切り替わったときに戸惑わずに済みます。

電子処方箋を選んだとき、患者は何をすればいいのか

電子処方箋には紙がありません。では薬局はどうやって処方の内容を知るのかというと、方法は2通りあります。

使うものどこで確認するか薬局ですること
マイナ保険証——いつもどおり読み取り機にかざす
引換番号
(+資格確認書や健康保険証)
医療機関でもらう「処方内容(控え)」/マイナポータルの「処方せん」「わたしの情報」の「処方情報」引換番号を薬局に伝える

ここで覚えておいていただきたいのが「処方内容(控え)」という紙です。電子処方箋を選ぶと、処方箋の代わりにこの控えが渡されます。ここに引換番号が書かれているので、薬局に持っていけば手続きが進みます。

つまり、患者さん側でやることは一つだけです。電子処方箋を選んだら、「処方内容(控え)」を必ず薬局に出す。 紙の処方箋を出すのと同じ感覚で構いません。捨ててしまったり、家に置いてきたりすると手続きに手間がかかるので、そこだけ気をつけていただければと思います。

なお、マイナポータルからも引換番号を確認できますが、これは薬局で薬を受け取る「院外処方」の場合にかぎられます。

マイナ保険証が読み取れないときは、どうすればいいのか

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

薬局の窓口では、マイナ保険証の読み取りがうまくいかない、操作の仕方が分からない、といった場面に頻繁に遭遇します。カードをかざす向きや位置、暗証番号の入力、顔認証がうまく通らないなど、つまずきどころはいくつもあるためです。急いでいるときにこれが起きると、それだけで気持ちが焦ってしまうと思います。

ただ、知っておいていただきたいのは、マイナ保険証が使えなくても薬は受け取れるということです。「マイナ保険証がないと電子処方箋は使えない」と思われがちですが、そうではありません。前の章のとおり、引換番号と資格確認書や健康保険証があれば手続きは進みます。

だからこそ、「処方内容(控え)」を持っていることが効いてきます。カードが読めないときの備えとして、この紙が保険になるわけです。窓口で困ったときは、遠慮なく薬剤師に声をかけてください。読み取りがうまくいかない方への対応は、こちらも慣れています。

お薬の情報を持ち歩く方法については、以下の記事もあわせてご覧ください。

お薬手帳はスマホだけで大丈夫?災害時に備える3つのポイント

電子処方箋にすると、何が得なのか

仕組みが変わるだけで患者さんに得がないなら、わざわざ選ぶ理由はありません。電子処方箋の利点としてよく挙げられるのが、重複投薬や併用禁忌の自動チェックです。

複数の医療機関にかかっていると、同じような効き目の薬が重なることがあります。一緒に飲むことが避けられている組み合わせになる場合もあります。処方の情報が電子的に共有されていれば、こうした点を機械的に確認しやすくなるわけです。厚生労働省も患者向けの説明資材で、こうしたチェックが副作用の防止と健康を守ることにつながると説明しています。向精神薬などでは、重複を知らせるアラートが表示される仕組みも用意されています。

もっとも、こうした確認はこれまでも、薬剤師がお薬手帳や聞き取りをもとに行ってきたことです。電子処方箋は、その作業をより確実にする道具だと考えるのが実際に近いと思います。薬剤師が処方内容を確認する仕事については、以下の記事で詳しく解説しています。

疑義照会とは?薬局で待たされる理由と待ち時間の短縮法を薬剤師が解説

どれくらいの人が使っているのか

電子処方箋を利用するうえで前提になるのがマイナ保険証です。その利用状況を見ると、厚生労働省の資料では2026年4月時点の利用率は68.15%とされています。数字だけ見ると、すでに多くの方が使っている印象を受けると思います。

ただし、この数字には地域差があります。同じ資料で薬局の利用率を都道府県別に見てみると、もっとも高い県で約83%、低いところでは約48%。かなりの開きがありました。全国平均だけでは実態がつかみにくい、ということです。

高齢の患者さんが多い筆者の薬局では、マイナ保険証を出される方はまだ多くない、というのが実感です。あくまで一つの薬局での話ですが、統計に幅があることを踏まえると、こうした差が各地にあるのだろうと思います。周りが使っていないからといって、遅れていると心配する必要はありません。地域や医療機関によって、進み方はかなり違います。

かかりつけ薬局を持つ意味については、以下の記事もあわせてご覧ください。

【薬剤師が解説】同じ薬なのに薬局によって値段が違う理由と、賢い選び方3選

電子処方箋は、いま知らなくても困る仕組みではありません。ただ、いつか自分の番が来たときのために、「処方内容(控え)を薬局に出せばいい」とだけ覚えておいてください。それだけで窓口での戸惑いはかなり減ります。気になることがあれば、遠慮なくかかりつけの薬剤師にご相談ください。

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