子どもが急に薬を飲まなくなった|味が変わる理由を薬剤師が解説

記事内に広告を含む場合があります

お薬

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれます。

「前回と同じお薬のはずなのに、急に飲んでくれなくなった」——お子さんに薬を飲ませていて、そんな経験はありませんか。実はこれ、お子さんの気まぐれとはかぎりません。主成分が同じでも、製造しているメーカーが変わると味や香りが変わることがあるからです。筆者も薬局で困った経験から、小児科でよく扱う薬の添加物を自分で比べる表を作ったことがあります。この記事では、なぜ同じ薬で味が変わるのかを整理しました。そのうえで、何に混ぜると飲みやすくなるのか、アレルギーがあるときに添加物をどこまで気にすればよいのかを、薬剤師の視点から解説します。

なぜ「前回と味が違う」ことが起きるのか

薬には、有効成分のほかに「添加物」が入っています。粉薬やシロップなら、飲みやすくするための甘み(矯味剤)や香料などです。ここで大切なのが、後発医薬品(ジェネリック医薬品)は主成分が同じでも、メーカーごとに添加物の組み合わせが違うという点です。

たとえば、痰を出しやすくするカルボシステインのドライシロップ。甘みをつける成分は、アスパルテームを使うメーカー、精製白糖を加えるメーカー、スクラロースを使うメーカーとさまざまです。同じ効果を期待して処方された薬でも、口に入れたときの印象は変わりえます。

では、なぜ突然メーカーが変わるのでしょうか。2020年末に発覚した後発医薬品メーカーの品質不正問題をきっかけに、医薬品の供給不足が始まりました。2026年現在も一部の薬で続いています。ある薬が入荷しなくなれば、薬局は同じ成分の別メーカーの製品に切り替えることになります。患者さん側の希望とは関係なく、供給側の事情で銘柄が変わるのです。

薬局の現場でも、「前回と味が違うみたいで飲んでくれない」というご相談は年に数回いただきます。そのときは「添加物が違うため、味が変わることがあります」とお伝えしています。特に供給停止などの影響でメーカーが変わると、その時点で問い合わせがやや多くなる、というのが実感です。相談が年間を通して均等にあるというより、供給のトラブルに合わせて波のように来る印象です。

医薬品の供給不足そのものについては、以下の記事で詳しく解説しています。

薬が手に入らない?医薬品供給不足2026年の現状と対策

薬が苦くなるのは「混ぜ方」のせいかもしれません

味が変わったと感じる原因は、メーカーの違いだけではありません。何に混ぜて飲ませているかによっても、薬の味は大きく変わります。

子ども向けの粉薬やドライシロップの多くは、苦い成分の粒を薄い膜で覆ってあります。口の中で苦味を感じにくくするためです。ところが酸性の飲みものに混ぜると、この膜が剥がれて苦味が出たり、成分の量が低下したりすることがあるとされています。国立成育医療研究センター薬剤部がまとめた「粉薬と服薬補助食品の飲み合わせ」でも、注意事項として挙げられています。

逆に、味の濃い食品は苦味や酸味、独特な香りをやわらげやすいとされています。抗菌薬(いわゆる抗生物質)やステロイド剤、漢方薬などが、その対象です。

混ぜ方どうなるか
味の濃いもの・甘いものに混ぜる苦味や独特の香りをやわらげやすいとされる服薬ゼリー、アイスクリーム、プリン、ココア
酸性のものに混ぜる膜が剥がれ、かえって苦味が出たり成分量が低下することがあるオレンジ・りんごなどの果汁飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト、スポーツ飲料
混ぜたまま置いておく時間がたつと苦味が出たり、効果が低下する場合がある——(混ぜたらすぐに飲ませる)

気をつけていただきたいのが、ヨーグルトや乳酸菌飲料は「甘いデザート」に見えて酸性だという点です。甘いものに混ぜればよいと考えてヨーグルトを選ぶと、かえって苦くなることがあります。すすめられるものと避けたほうがよいものは、セットで覚えておくと安心です。

薬局では、マクロライド系やペニシリン系の抗菌薬など、独特の苦みを感じると想定される薬をお渡しすることがあります。そのときは服薬ゼリーやアイスクリーム、プリンなどで味をやわらげる方法を、特に強調してお伝えしています。すべての薬で同じ案内をしているわけではありません。薬の種類を見て説明を変えている、というのが実際のところです。

薬そのものの設計も年々変わっています。たとえばクラリスロマイシンのドライシロップは、発売当初の製剤が苦味のために飲みにくいという課題を抱えていました。そこで、苦味成分の粒を高分子の膜で覆った製剤が後から発売されています。水で飲めば苦味を感じにくい設計ですが、酸性の飲みものと合わせると苦味が出ることもあるようです。同じ成分でもメーカーによって味に差があると感じるため、筆者は自分の薬局がどのメーカーの製品を採用しているかを気にしています。

薬の飲み方の基本については、以下の記事もあわせてご覧ください。

飲み薬の正しいのみ方|薬剤師が教える基本と注意点まとめ

アレルギーがあるとき、薬の添加物はどこまで気にすべきか

食物アレルギーのあるお子さんの保護者から、薬の添加物について尋ねられることがあります。実際に乳糖についてお問い合わせをいただいたときは、その薬の添付文書(薬の公式な説明書)で添加物を確認してお答えしました。薬剤師は調べる手段を持っていますので、気になるときは遠慮なく聞いてください。

ここで、混同しやすい2つを整理しておきます。牛乳アレルギーは、牛乳に含まれるタンパク質に対する免疫の反応です。一方の乳糖不耐症は、乳糖を分解しにくい体質を指します。この2つは別のもので、医薬品の添加物として問題になりやすいのは主に前者との関係です。

乳糖は、吸入薬やカプセル、錠剤、散剤など幅広い薬に添加物として使われています。食物アレルギー研究会の資料では、乳糖について「非常に感受性の高い牛乳アレルギーの患者に対して稀に症状を誘発することがある」とされています。裏を返せば、乳糖が入っているというだけで一律に飲めないわけではありません。自己判断で薬をやめると、本来治療すべき病気のほうに影響が出てしまいます。心配なときは、中止する前にご相談ください。

食物ごとに注意が挙げられている成分には、次のようなものがあります。

  • 牛乳: 乳糖のほか、タンニン酸アルブミン(下痢止め)、カゼイン(経腸栄養剤など)
  • 鶏卵: 卵白由来のリゾチーム塩酸塩。処方薬は2016年に販売中止となりましたが、市販の風邪薬やトローチ、点眼薬などには含まれていることがあります
  • ゼラチン: カプセルや一部の坐剤
  • 漢方薬: 小麦、ゴマ、モモ、ヤマイモ、ゼラチンなどを含むものがあります

市販薬を選ぶときは、パッケージの成分表示を確認してください。そのうえで薬剤師や登録販売者に「この成分にアレルギーがあります」と伝えていただくのが確実です。

薬局でこう聞くと話が早いです

「こんなことを聞いてもいいのだろうか」と遠慮される方が多いのですが、薬が飲めるかどうかは治療を続けられるかどうかに直結します。次のように伝えていただけると、薬剤師も具体的に答えやすくなります。

  • 「前回と味が違うみたいで、飲んでくれません」とそのまま伝える
  • 前回の薬の袋やお薬手帳を持っていく(前回どのメーカーの薬だったかが分かります)
  • 「何に混ぜたら飲めますか」と、薬の名前を挙げて聞く(薬の種類で答えが変わるため、具体的に案内できます)
  • アレルギーがあるときは「添加物を確認してほしい」と伝える
  • 飲めないからといって、自己判断で中止しない

薬が飲めないことは、育児のなかでかなり消耗する出来事だと思います。お子さんの体調が悪いうえに、飲ませようとして泣かれてしまうと、保護者の方も疲れてしまいます。無理に続ける前に、一度かかりつけの薬局にご相談ください。混ぜ方の工夫や、場合によっては剤形の変更を医師に提案できることもあります。

お子さんが体調を崩したときの備えについては、以下の記事もあわせてご覧ください。

子どもの発熱で使える市販薬は?自宅療養の備えを薬剤師が解説

同じ名前の薬でも味が変わることがある——それを知っているだけで、「うちの子のわがままかもしれない」という自責の気持ちは少し軽くなるはずです。気になることがあれば、遠慮なくかかりつけの薬剤師にご相談ください。

【薬剤師の方へ】小児科でよく扱う薬の添加物比較

以下は、2022年時点の添付文書をもとに作成した添加物の比較です。掲載当時の薬価は、その後の改定により現在の価格と異なるため削除しました。製剤変更や販売状況の変化がありうるため、最新の情報は各製品の添付文書でご確認ください。

一般名:カルボシステインシロップ5%

共通点:【色】 かっ色

    【pH】 5.5〜7.5

     【味】 甘い

    【におい】 特異な芳香

剤形 シロップ剤

D-ソルビトールソルビン酸カラメル香料pH調整剤精製白糖 サッカリンナトリウム水和物 パラオキシ安息香酸エチル
ムコダインシロップ  〇 〇 〇  
テバ
タカタ  〇〇( 水酸化ナトリウム、塩酸 )   〇
トーワ 〇〇( 水酸化ナトリウム、塩酸 )
JG
ツルハラ 〇( 水酸化ナトリウム、塩酸 )
各メーカーのカルボシステインシロップ5% 添加物の違い

一般名:カルボシステインドライシロップ50%

【色】

  • 白色 (ムコダインDS50% 、トーワ
  • 微黄白色〜黄白色(タカタ
  • 白色~微黄白色(ツルハラ
  • 微黄白色(テバ

剤形ドライシロップ剤

ムコダインDS50% \21.4/g その他ジェネリック ¥9.4/g

添加物比較

矯味剤

・粉末還元麦芽糖水アメ
 ムコダイン

・D-マンニトール
 ムコダイン、 テバ

・アスパルテーム
ムコダイン 、タカタトーワツルハラテバ

・精製白糖
 トーワツルハラ

・サッカリンナトリウム水和物 
 タカタ

・カラメル
  タカタ

・スクラロース
  ツルハラ

賦形剤、崩壊剤、安定化剤、結合剤

・クロスカルメロースナトリウム
ムコダイントーワ

・デンプングリコール酸ナトリウム
 ムコダイン

・ヒドロキシプロピルセルロース
 ムコダインタカタトーワ

・含水二酸化ケイ素
 ムコダインタカタツルハラテバ

・カルメロース(カルシウム)
  トーワツルハラテバ

・結晶セルロース・カルメロースNa
  トーワ

・メタケイ酸アルミン酸Mg
  トーワ

・軽質無水ケイ酸
  ツルハラ

・部分アルファー化デンプン
  ツルハラ

・ポビドン
  ツルハラ

防腐剤

・安息香酸Na
トーワツルハラテバ

・プロピレングリコール
  テバ

・ポリビニルアルコール(部分けん化物)
  テバ

その他

・黄色三二酸化鉄 (着色料)
テバ

・香料
  ムコダイン 、タカタトーワツルハラテバ

一般名: レボセチリジン塩酸塩シロップ0.05%

共通点:【色】 無色澄明

    【pH】 4.7〜5.3

pH調整剤

酢酸ナトリウム   ザイザル 、 サワイトーワアメルニプロ

酢酸       ザイザル 、 サワイトーワアメルニプロ

甘味料

マルチトール液  ザイザル

グリセリン    ザイザル 、 サワイトーワアメルニプロ

還元麦芽糖水アメ  サワイトーワアメルニプロ

サッカリンナトリウム水和物   ザイザル 、 サワイトーワアメルニプロ

防腐剤

パラオキシ安息香酸メチル   ザイザル 、サワイトーワアメルニプロ

パラオキシ安息香酸プロピル   ザイザル 、サワイトーワアメルニプロ

トコフェロール        サワイトーワアメルニプロ

その他

香料    ザイザル 、サワイトーワアメルニプロ

バニリン (バニラの香り)  サワイトーワアメルニプロ

精製水   ザイザル

一般名: レボセチリジン塩酸塩ドライシロップ0.05%

【色】 タカタ、TCK:白色

    YD、 日本臓器 、 杏林 : 橙色

乳糖水和物 シクロデキストリン 粉末還元麦芽糖水アメ 水酸化ナトリウム クエ
ン酸ナトリウム水和物
ヒドロキシプロピルセルロー
アセスルファムカリウム スクラロース 無水ケイ
黄色5号 香料
YD
日本臓器
タカタ
杏林
TCK
各メーカーの レボセチリジン塩酸塩ドライシロップ0.05%の添加物の違い

一般名:アンブロキソール塩酸塩シロップ小児用0.3%

共通点:【色】  無色~微黄色澄明

    【味】甘い

異なる点:【匂い】果実様の香気 (ムコソルバン0.3% 、タカタ

         芳香(トーワタイヨー

【pH】2.3〜3.3(ムコソルバン0.3% 、TCKタイヨー

         3.5〜4.5 (トーワ

その他ジェネリック ¥5.2/ml

pH調整剤

酒石酸     ムコソルバン

クエン酸水和物 タカタ

水酸化ナトリウム  タカタトーワ

塩酸     トーワTCK

リン酸二水素Na  トーワ

(詳細不明)  タイヨー

甘味料

D-ソルビトール    ムコソルバン 、 タカタトーワTCKタイヨー

グリセリン  ムコソルバン、トーワTCK

防腐剤、酸化防止剤

ピロ亜硫酸ナトリウム   ムコソルバン 、TCK

エタノール       ムコソルバン

安息香酸        ムコソルバン 、TCKタイヨー

パラオキシ安息香酸メチル  タカタトーワ

パラオキシ安息香酸エチル  タカタトーワ

乳化安定化剤、増粘剤

ヒドロキシエチルセルロース  ムコソルバン、TCK

その他

香料  ムコソルバン (ラズベリーフレーバー) 、タカタトーワTCKタイヨー

塩化ナトリウム  タカタ

一般名: アンブロキソール塩酸塩DS小児用1.5%

特徴:【色】 白色〜微黄色(ムコソルバン , ムコサール)

白色(タカタ

     【味】 甘い

    【におい】 ヨーグルト様 (ムコソルバン , ムコサール)

         芳香(タカタ

タカタ、ムコサール \28/g

D-マンニトールエリスリトールヒドロキシプロピルセルロースアスパルテームグリチルリチン酸一アンモニウムフマル酸一ナトリウム安息香酸ナトリウム含水二酸化ケイ素香料
ムコソルバンドライシロップ1.5%〇(ヨーグルトフレーバー)
タカタ
ムコサール 〇(ヨーグルトフレーバー)
各メーカーの アンブロキソール塩酸塩ドライシロップ小児用1.5% の添加物の違い

一般名: アンブロキソール塩酸塩内服液0.75%

特徴:【色】 無色〜微黄色澄明

    【味】 苦い

    【におい】 なし

    【pH】5.0〜6.0

その他ジェネリック \4.5/ml

クエン酸リン酸水素ナトリウム塩化ナトリウムパラオキシ安息香酸メチルパラオキシ安息香酸エチルプロピレングリコール
ムコソルバン内用液0.75%
ツルハラ
杏林
JG
タイヨー
各メーカーの アンブロキソール塩酸塩内用液0.75% の添加物の違い

今回の記事が読者の皆さんのお役に立てれば幸いです。

コメント