疑義照会とは?薬局で待たされる理由と待ち時間の短縮法を薬剤師が解説

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「処方箋の内容を確認しますので、少々お待ちください」——薬局でそう言われて、待合の椅子に座り直した経験はありませんか。具合の悪い子どもを連れているときなどは、早く帰りたい気持ちが先に立つと思います。同時に「自分の薬に何か問題があったのだろうか」と不安にもなります。この待ち時間に薬剤師が何をしているのかは、外からは見えません。この待ち時間に起きているのは「疑義照会(ぎぎしょうかい)」という手続きです。この記事では、その中身とどれくらい意味があるのかを整理しました。あわせて、待ち時間を短くするために患者さん側からできることも、薬剤師の視点から解説します。

待っているあいだ、薬剤師は何をしているのか

薬剤師が処方箋を見て気になる点を見つけたとき、処方した医師に問い合わせて確認することを「疑義照会」といいます。多くの場合、薬局の奥で医師や医療機関に電話をかけているのが、その待ち時間の正体です。

これは薬局のサービス方針ではなく、法律で決められた義務です。

薬剤師は処方箋中に疑わしい点があるときは、その処方箋を交付した医師、歯科医師または獣医師に問い合わせてその疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない。

薬剤師法24条

「とりあえず出しておいて、後で確認する」という選択肢は制度上ありません。待っていただくのは、確認が終わるまで先に進めない決まりだからです。

筆者は「処方箋に記載されている件で病院にお尋ねしたいことがあるので、しばらくお待ちください」とお伝えしています。ここで「何か問題があるのですか」と聞いていただいて構いません。差し支えのない範囲で、何を確認しているのかはお答えできます。

お急ぎのときに、その場で待ち続けるしかないわけでもありません。事情をお伝えいただければ、いったんご自宅に戻っていただいて、確認が取れてから受け取りに来ていただく方法があります。それも難しい場合には、処方箋をお返しして、別の薬局にお持ちいただくこともあります。待つ以外の選択肢があることは、あまり知られていません。急いでいるときは、我慢して座っているより、その旨を伝えていただいたほうが早く解決することがあります。

その確認に、どれくらい意味があるのか

「そんなに念入りに確認するようなことなのか」と思われるかもしれません。ここは感覚ではなく、調査の数字で見てみます。

日本薬剤師会が2015年度に実施した全国調査では、全国297,086枚の処方箋が対象になりました。このうち疑義照会が行われた割合は2.74%でした。おおよそ40枚に1枚程度という計算になります。

注目したいのはその先です。同じ調査で、薬の中身に関する疑義照会のうち、実際に処方が変更されたのは74.88%でした。問い合わせた件のおよそ4分の3で、処方の内容が変わっているということになります。また、疑義照会のうち書類の記載不備などの形式的なものは21.90%にとどまり、残る約8割は薬の中身に関する確認でした。

もうひとつ知っておいていただきたいのが、同じ調査の「その疑問点をどこで見つけたか」という集計です。

どこから見つかったか割合
処方箋の内容から56.1%
患者さん・ご家族との会話(服薬指導)から42.4%
薬歴(薬局の記録)から14.6%
お薬手帳から4.3%
その他1.6%

複数回答の集計ですが、4割以上が窓口での会話から見つかっているという結果です。処方箋の紙を眺めているだけでは分かりません。「以前に薬で発疹が出たことはありませんか」「他に飲んでいる薬はありますか」といったやり取りの中で初めて気づくケースが、相当数あるということです。

窓口で薬剤師にいろいろ聞かれるのを、形式的な手続きだと感じている方は少なくないでしょう。ただ、この数字を踏まえると、質問に答えていただくこと自体が、ご自身の安全に直結していると言えます。急いでいるときほど億劫になりますが、ここは省略しないほうが得です。

どんなときに疑義照会になるのか

実際に問い合わせが必要になるのは、たとえば次のような場面です。

  • 複数の医療機関を受診していて、同じ効き目の薬が重なっている可能性があるとき
  • 年齢や体重に対して、用量の確認が必要と考えられるとき
  • 一緒に飲むことが避けられている組み合わせが含まれているとき
  • 過去にアレルギーや副作用が出た薬、体質的に使えない薬が処方されているとき
  • 処方箋の記載内容そのものに確認が必要なとき(日数や用法など)

筆者の実感としては、疑義照会は1日に1〜2件ほど発生します。特別な出来事ではなく、日常業務の一部という頻度です。

印象に残っているのは、ペニシリン系の抗生物質が体質的に使えない方に、その系統を含む薬が処方されていたケースです。お薬手帳にはその旨が記載されていました。記載があっても見落とされてしまうことは起こりえます。診察は限られた時間の中で行われ、患者さんによっては薬の情報が複数の医療機関に分散しているためです。だからこそ医師と薬剤師がそれぞれ独立して確認する仕組みになっています。疑義照会は、その仕組みが働いた場面だと考えていただくのが正確です。

この観点でいうと、お薬手帳は持参するだけでなく、気になることは口頭でも伝えていただくと確実です。手帳の情報は量が多いため、窓口で一言添えていただくほうが早く拾えます。

お薬手帳の使い方については、以下の記事もあわせてご覧ください。

お薬手帳はスマホだけで大丈夫?災害時に備える3つのポイント

待ち時間を短くするためにできること

疑義照会そのものは減らせませんが、かかる時間には差が出ます。

まず、「大きな病院の処方箋だから待たされる」という印象をお持ちの方もいるでしょう。これは以前ほど当てはまりません。かつては大病院への疑義照会に時間がかかっていましたが、開業医との時間差はかなり縮まっています。以前は大病院の一部で薬剤部へのFAXが必要なところもありましたが、現在はほぼ直接電話で対応していただけます。

むしろ影響が大きいのは時間帯です。大きな病院では、夕方以降になると連絡が取りにくくなり、確認に時間がかかる傾向があります。受診の時間帯を選べる場合は、この点を頭に入れておくと待ち時間の見通しが立てやすくなります。

患者さん側からできることをまとめます。

  • 処方箋を薬局に事前に送っておく(受付前に確認を始められるため、疑義照会が発生しても並行して進められます)
  • かかりつけの薬局を決めておく(過去の薬の記録が残っているため、確認が早く済みます)
  • お薬手帳を持参し、アレルギーや過去に合わなかった薬は口頭でも伝える
  • 窓口での質問には、面倒でもできるだけ具体的に答える
  • 急いでいるときは、その場で我慢せず「急いでいる」と伝える(一度帰る、別の薬局に回すなどの方法が取れます)

処方箋の事前送信については、EPARKの「処方箋ネット受付」というサービスがあります。運営はくすりの窓口株式会社で、利用は無料、会員登録なしでも使えます。処方箋をスマートフォンで撮影して送ると、調剤の仮受付のメールが届く仕組みです。すべての薬局が対応しているわけではありませんが、チェーン展開している薬局やドラッグストアを中心に対応が広がっています。詳しくはEPARKくすりの窓口の公式サイトをご確認ください。

かかりつけ薬局を決めるメリットについては、以下の記事で解説しています。

【薬剤師が解説】同じ薬なのに薬局によって値段が違う理由と、賢い選び方3選

電子処方箋が広がれば、待たなくてよくなるのか

紙の処方箋を電子データでやり取りする「電子処方箋」は、着実に広がっています。厚生労働省によると、2026年5月時点で9割以上の薬局に導入されています。他の医療機関で処方された薬の情報を参照しやすくなるため、重複や飲み合わせの確認がしやすくなる仕組みです。

ただし、処方する側の医療機関、とくに診療所での導入は、薬局よりも遅れているとされています。薬局が対応していても、電子処方箋そのものが回ってこなければ意味がありません。筆者自身も、現場で電子処方箋を応需する機会はまだ多くないというのが正直なところです。導入率の数字と、窓口での実感には、まだ開きがあります。

もう一点、電子化によって速くなるのは連絡や情報共有の手段です。処方の内容に確認すべき点があるかどうかを判断する行為そのものが、なくなるわけではありません。情報が揃いやすくなれば疑問点は見つけやすくなりますが、見つかった疑問を医師に確認する必要性は変わらないのです。

処方箋のルールの変化については、以下の記事もあわせてご覧ください。

リフィル処方箋とは?使い方と注意点を薬剤師がわかりやすく解説

薬局で待たされるのは気持ちのいいものではありませんし、なぜ待つのか分からない苛立ちは当然のものだと思います。ただ、その待ち時間は、薬剤師があなたの薬を渡してよいかどうかを判断している時間です。2015年度の全国調査では、薬の中身に関する疑義照会のおよそ4分の3で、実際に処方が変わっていました。そして、その疑問の4割以上は、窓口でのやり取りから見つかっています。

待ち時間が長くなりそうなときや、どうしても急ぐときは、遠慮なくその旨をお伝えください。何を確認しているのか気になるときも、かかりつけの薬剤師にご相談いただければと思います。

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